カタカナ氾濫に疑念あり

あっちゃんが、苦笑しながら新しく会社から支給された名刺を差し出した。
宅地建物取引主任者/住宅ローンアドバイザー/ファイナンシャルプランナー…」とある。

『ずいぶん長い肩書ね。名前よりよっぽどアピールしたいみたい。名刺というより、資格書かしら?』

「ですよねぇ。私もかえって怪しい印象与えそうで嫌なんですよね。社長が”資格はあるだけ箔がつく”という考え方でこんなどこがポイントなのか分からない名刺?になってしまいました。」

そばにいる息子が視線で”嫌味な言い方はそれくらいにしろ!”と訴えているので、その場はそれで収まった。私とて嫁の名刺にまで文句を言いたいのではない。
あっちゃんとは気の置けない仲だし、少々表現がきつくても後に残ることはないと安心している。

元来、カタカナ表現が好きになれない性分からか、日本語で充分事足りる語彙を外国語に置き換えることに違和感を感じる。
もちろん、すでに浸透した使い方もあるので、一概に否定している訳ではない。

川柳を20年ほどやっており、同人誌の句評も担うのだが、私と同年代でもカタカナを用いたものは確実に増えている。
知らない語彙は辞書などで調べるのだが、句を一見した際、カタカナが多いとどこか落ち着かないと思ってしまう。



世の中言ったもの勝ちになって久しい。
職業も◎×クリエイター、▲□プロヂューサー、◆☆カウンセラーなど。
プロもカリスマもその基準があいまいだ。

後日、あっちゃんが持ち帰った会社資料に「任意売却・アドバイザー」とある。
何かと尋ねると案の定、履歴書に書けるようなものではない様子。

『付き合いのある会社が勧めてきましてね。私は実務の経験があるので、特に必要とは感じませんし、何より、費用を払うだけで認定されるというものなので、かえって客先に”資格”保持を示したいと思いませんね。』

「あなたのお勤め先、段々怪しい不動産屋になっている気がするんだけど」
『あはは、そうですよねぇ。会社の運営方針が私の理念と乖離していっているようには思います。信条に反するならば考えないといけないですね。社長はワンマンですから、意見は変えないでしょうし。』

常々、嫁の勤務先に疑問がある私としては小躍りしたい気持ちだ。溜飲を下げたと言うべきか?