海老で鯛を釣る2

続きから:

もちろん会わずに伝言だけ預かった。帰宅した嫁に話すと、大きくため息をつき、
「その方、先月 契約直前に『他業者に依頼するから』と手を切られて。多分、その業者さんにしてやられたんだと思いますよ。要するに金で釣られたのしょうが、フタを開けてみると騙されたと気づいたんでしょうね。まさか、家に来るなんて。会社に来ればいいのに。」
 『だからね、もうその手の話に関わるのは止しなさい。骨折り損だけで済まなくなるわよ。不義理をしておいてのこのこ顔出す相手にろくな者はいないの知ってるでしょ。これで断って、その輩は「自業自得だ」と考えると思う?逆恨みされるのが関の山よ』

「そうですね。ちょうど依頼も増えてこれ以上の負担は難しいと思っていましたし。もちろん、Gさんはお断りします。私もそこまでお人よしじゃありませんし。きっとまたいろいろ同情を買うような話をしてくるでしょうから、弁解を聞く前にお断りしますね。気味の悪い思いをさせて申し訳ありませんでした」
というや否や、私の目前で電話を掛け始めた。
結果、相手に経緯を確認させ、あっちゃんとしても強引に手を切られた時点で周りへの体面も失い、もう話が復活したとしても信用してもらえないだろうから、他に依頼したほうがいいですよ、と相手のペースになる前に切っていた。