女の意地

大学時代からの付き合いでかれこれ30年以上、事実上の「独身」がいる。

「夫」は彼女が30代初めの時に他の女性の元へ行ったままだ。相手は子供のいる女性らしく、再婚は強くは望んでいないと聞いた。「妻」である友人は、意地でも離婚はしないのだと言う。たしかに夫の言い分や行動は身勝手の何物でもない。

ある程度の収入がありながら、こっちの生活があるから、本妻には生活費は送れない。よりを戻す考えもないので離婚してくれ。子供がいなくて本当に良かったじゃないか。そっちも早く新しい人を見つければいいだろう。家はローンがあるが、売れば借金は消えるし、残った金はやるから、と。

「このぬけぬけした態度で悪びれもしないことに心底腹を立てているの。絶対に離婚に同意してやらない。」と、義両親の墓も位牌も守り続けている。


「義両親でさえ”離婚してやり直せ”と勧めてくれたけどね。夫と買った家のローンを返し終えて私名義にした時、心底嬉しかったわ。とうとうやったわって。義両親も看取って、自分で今はボロだけど家を守ったのよ。私は自分の義務を果たした、それで満足なのよ。」

今のご時勢ならば、家を売るにも抵当権が任意売却で抹消できるかどうかという代物だが、さすが30年前は時代が違う。中古でも売れば借金を返せて手元に資金が残る。


彼女の気持ちは女性として理解できる。しかし『もったいない』とも思う。
夫が去った時、彼女は30代前半。私たちの世代では30代は女性としては見てもらえない傾向にはあった。しかし、人生をやり直すことより意地でその時点にしがみついたことは見ていてとても残念だが、幸か不幸か彼女には満足な人生らしい。